「卒業式」は日本だけ!?

今週のお題「卒業」

私たちがよく知る「卒業式」が実は日本特有の儀式と知ったのが先月。

海外には無い、らしい。

詳しく知りたいと思っていたところ、良い本に巡り合えた。

その名も「卒業式の歴史学

卒業式の歴史学 (講談社選書メチエ)

卒業式の歴史学 (講談社選書メチエ)

 

卒業式のはじまり

本書によると、日本で最初の卒業式は、1876年(明治9年)陸軍戸山学校で行われた。

「卒業証書の授与」という儀式がここから始まり、その後、軍学校だけでなく、官立・公立学校にも広まっていく。

お雇い外国人のエドワード・モースは、1882年(明治15年)に東京女子師範学校の卒業式に臨席し、卒業証書授与の様子を記録している。生徒が何度もお辞儀をする様子が克明に記されており、礼儀作法への関心・感銘が伝わってくる。

式典は標準化されていき、明治半ばには、ほぼ現代と同じ式次第になっていた。

卒業式と「涙」

筆者は、「原則として泣くことを禁じられた空間」である学校において、例外的に「泣くことが望ましい場面」の代表として、卒業式をとらえている。

そうえいば最近、YouTubeに卒業式の合唱をアップする人が増えてきており、たまたま関連動画に挙がったひとつを見てみたところ、歌いながら感極まって泣いてしまう生徒達の純粋さに、おもわず私も心が震え、涙してしまった。

自分も体験したはずの卒業式を、客観的に映像で見てみると、意外な感慨が湧いてくる。

楽しかった思い出、充実感、達成感。友人との別れの悲しみ、切なさ。未来へ進む興奮と不安。そんな感情が混ざり合って涙しながらも、最後まで歌いきろうとする生徒達。それを囲むようにして座っている教師、来賓、保護者は、旅立ちを暖かく見守っているようだ。

「儀式」の良さとはこれだ、と思った。

人生の節目に、ドラマチックな演出で言葉を贈り合い、歌をうたい、涙を流す。

そのことで、記憶は美しいものとなる。

個人が精神的に成長していく中で、過去の自分への信頼・誇りが、どれだけ重要なものか。

 近代制度の成功例

筆者は、卒業式を「最も成功した儀式」という。

儀式の本質が集団の感情を喚起し行き渡らせることであるならば、卒業式は最も成功した儀式といってよいだろう。(中略)日本の近代学校に生まれた卒業式がたどった経緯は、むしろその特殊性ゆえに、儀式による「集合心性」の形成過程を明確に示す稀有な例といえるだろう。(231頁より)

実は私は、明治維新後の教育体制に疑問を持つことが多い。

「いろは歌」をやめて五十音にしてしまったし、全国の寺子屋で音読されていた「実語教」も習わなくなった。

しかし、卒業式に関しては、「近代学校」という西洋由来の型の中で、よくぞここまで日本人の感性に合う儀式に磨き上げてきたな、と思った。

最後に、いまや定番の卒業式歌『旅立ちの日に』の誕生秘話を、これまた最近知って感動した。こんなアツイ話があったとは!

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